照明の選定

画像処理ソフトウェアやカメラが優れていても、検査対象の明るさ、つまり光の情報をカメラで的確にとらえなければ、目的とする検査結果は得られません。そのために目的に適した照明を選択する必要があります。検出すべき異物や汚れ、文字やマーク、計測部品などが画像として明確になるように照明することが必須となります。
照明光は対象物にあたった後、表面の状態や形状により様々な形で反射し、結果としてカメラに入る光の情報(画像)に認識すべき対象が映らなかったり、あるいは、照明発光部そのものが映り込み、それを撮像してしまうことなどがあります。
的確に対象物を撮影するために、対象物や目的に依存した安定した照明をあてることが重要です。あらゆる対象物に適用できる照明はありません。
様々な照明条件に応じた各種光源や照明方式から、最適な方法や機器を選定する必要があります。

目的を達成するために

照明を選定する上でまず重要なことは、何を行うかです。
画像処理のアプリケーションは大きく分けると、「外観検査」「OCR」「寸法計測」「アライメント」の4つに分類されます。
画像処理を安定して撮像するためには、次の3つが大きな要素となります。

①色とコントラスト  ②ワークの形状・状態  ③視野と照明設置距離

色とコントラスト

ワーク色に対し、対極の位置にある色を補色といいその色を際立たせる効果があります。隣にある色を類似色といい、色を吸収する(なじむ)効果がありま
す。それらの効果を使い、背景や必要のない色を黒く映したい場合は補色のLEDを選定し、白くしたい場合は類似色を選定します。また、波長の持つ特性
で短波長になるほど散乱率は大きくなりますので、微細な傷を浮かび上がらせることができます。
カラーカメラの場合は白色の照明を用いることが多くなります。
このように、ワークや波長の特性などから照明色を選定いたします。

形状と状態

ワークの形状によっては、照明の照射角度が一定のため傾きのある面で照明の正反射光がカメラに入りハレーションを起こしてしまったり、表面状態が鏡面のような場合は照明発光部そのものが映り込んでしまいます。ワークの形状・状態に合わせ同軸落射照明方式、直射照明方式、間接照明方式、透過照明方式とレンズの組み合わせから均一で最適な照明を選ぶ必要があります。

レンズの光軸に沿って真上から対象物に対して垂直に照明する方式。主に鏡面状の対象物(平坦で反射率の高いもの)に使用する。
例えば、ICのパターンや、LCDの電極、シリコンウェハーのコード、金メッキのマーク等、反射率がわずかに異なる領域の強調に適している。
光学レンズを通して、照射するか否かで、次の2つの方式があります。

同軸落射照明方式

ハーフミラーやビームスプリッターを鏡筒内部に内蔵し、光学レンズを通して照射する方式で、テレセントリック照明とも呼ばれる。
対象物に対し垂直に照射した正反射光を受けるので鏡面など反射率が高いものにのみ有効です。傷や異物などは乱反射するため暗く写り、鏡面部とのコントラストがつきやすくなります。鏡面部でないものや傾きがある正反射にしない対象物には不向きです。

疑似同軸落射照明方式

光学レンズを通さずにハーフミラーやビームスプリッターで照明光路をレンズの光軸と同じにし、対象物に垂直に照明する方式。光学レンズ
を通さないため、鏡面でない対象物にもある程度対応し、テレセントリックレンズ以外のレンズと組み合わせて使用することが可能です。
その場合はミラーサイズや開口部寸法をテレセントリックレンズに比べ大きくする必要があります。

対象物に対し直接照明をあてる方式で、もっとも頻繁に使用されている照明方式です。主に鏡面でない対象の凸凹面の傷、クラックなどのエッ
ジを検出するために使用されます。対象物に直接あてるので、明るさが必要なときに使用されワークの形状によってリング照明、ローアングル照
明水平対向照明、バー照明、面発光照明、ライン照明など様々な形と角度で使用されます。

疑似同軸落射照明方式

リング状の照明(360°)から照射するため、影ができにくい照明方式。クランプが容易で設置が簡単であるため、表面の傷検査汚れ確認や2Dコードの読み取りなど、幅広いアプリケーションで利用されています。角度もフラットのタイプからワークに対し水平まで各種用意しております。
鏡面ワークの場合は偏光フィルターとの組み合わせで写り込みを防止したり、設置距離によっては照明の指向性により、光の中抜けやムラなどが起こる場合があります。

直射照明方式

四角い照明を対象物に合わせ様々な角度から照射する照明方式です。対象物の反射率や、金属加工傷のあるなしなど形状・状態に合わせ、正反射光や拡散フィルターをつけての拡散光や偏光板との組み合わせなど、最適な条件で撮像いただけます。

直射照明方式

ラインの形状もしくはライン上に発光する照明方式。
ラインセンサーカメラで認識する際、必要な部分のみを照明するのに用いられます。
エリアカメラ用途では、シャープで直線性に優れるため、水平方向に近い照射角度から照明することで、微小な凹凸部を強調させて認識する方法などに用いられます。用途にあわせ、集光レンズ、拡散板、偏光フィルターを併用することがあります。

透過照明

レンズと照明の間に検査対象物を置き、そのシルエットを撮像するための照明です。
おもに対象物の形状測定や透明体の傷、異物混入等の検出に使用されます。コントラストがつきやすいため、安定した画像が得られます。ただし、発光面が対象物より大きくなり、さらに後側に照明の設置スペースが必要となります。まわり込みの光を減らすために、受光側のテレセントリックレンズのNAに合わせたコンデンサレンズを用いる方式もあります。

通常の照明方式では、指向性が一定であるために、対象物の形状によっては部分的に強く反射してしまうなど輝度むらが生じ、対象物が認識
できないことがあります。また、曲面のある鏡面対象物では照明発光部が対象物に写り込んでしまうといった問題があります。これらの問題を
解決するために、様々な方向がら照射する間接照明方式を用います。

半球に近いドーム型の反射板に下方から光をあてて反射した光だけを対象物に照射するドームタイプや導光板を通すことで、拡散したやわらかい光で当てる間接照明方式。
結果として様々な角度をもつ光が対象物にあたり平面や曲面であっても輝度ムラのない均一な照明を得ることができます。
ただし、反射板にあてたり導光板を通すため全体的に照度が低く高倍率での撮像や高速での撮像には不向きです。

複数の照射角度をもつ直射照明を組み合わせ、対象物に様々な角度か
らの照明が得られるように工夫した照明方式。
直射照明方式のため、ドーム照明(拡散照明方式)に比べ高い照度が得
られますが、発光部の写り込みに気をつける必要があります。
照明の切り替えにより、角度による異なる画像を得られます。

視野と照明設置距離

テレセントリックレンズは視野周辺部においても、画角がないので直射照明方式を採用する場合、照明サイズは視野+α程度のサイズが必要なのに対し、通常のレンズは画角があるので、直射照明や透過照明の場合は画角の影響を考慮し照明サイズを選定する必要があります。
画角と中抜けを考慮した照明の選定が必要となります。

LED(発光素子)

波長域:
近紫外・青・緑・黄・赤・近赤外光・白色
寿 命:
10,000~30,000h以上
特 長:
●長寿命  ●on/offの応答性が高い  ● 条件に応じて様々な発光色を使用可能 ● 波長領域が短く、単色に近い  ●LED一つ一つが小さい為、多種の形状に対応
●低消費電力
ディスプレイ技術の向上とともに、ここ数年、高輝度タイプの発光素子が普及しています。産業用の照明にも数々のLEDがラインナップされており、個々の輝度は小さいが、数十個~数百個のLEDを使用することにより照明機器としての使用が可能です。形状もスポット、リング、ライン、面状などに加工できます。
また最近では1個の輝度が超高輝度なものも出現し、テレセントリック光学系の同軸落射照明などはハロゲン光源+ファイバーライトガイドの組み合わせから高輝度LED単体での使用にかわりつつあります。
LEDそのものの特徴は寿命が長い(数万時間~)、ON/OFFの特性に優れる、波長帯域が狭い近紫外・青・緑・黄・赤・近赤外や白色などの色(波長帯域)があり、用途に応じた波長の選択ができるなどがあります。
LEDを点灯させる電源は、比較的設計が容易でユーザーでのカスタマイズが可能です。明るさの制御方法として、パルス制御、電圧制御、電流制御があります。いずれの場合もLED素子は高温に弱く、連続点灯すると素子自体の発熱で効率劣化が起こり照度が下がります。連続点灯ではなく必要に応じたON/OFF制御やLED灯具側を冷却、放熱対策することで照度が安定します。

ハロゲン照明+光ファイバーライトガイド

波長域:
白色光
寿 命:
150w・最大光量で500h / 100w・最大光量で1,000h / 50w・最大光量で2,000h
特 長:
● 高い照度を持つ ● ファイバーのサイズが細かい為、小型化、多様化が容易 ●時間による経時変化が少ない ● 一定の広がり角を持ち、指向性が強い
●光源は熱を持つが、ファイバーより出てくる光は熱を持たない
封入ガスに微量のハロゲンガスを添加した白熱ランプを安定化電源で点灯させる光源装置と素材に多成分ガラスやアクリルを使用した光ファイバーを多数バンドルしたライトガイドの組合せです。ハロゲンランプは、ランプバルブ内の高温によりハロゲンサイクルを発生させることで、ランプバルブ壁の黒化現象を防止するため、寿命末期まで光のパワーや色温度の径時変化が少なく安定しています。ランプの照度は数十万ルクス以上と非常に高く、明るさを要するレンズ倍率の高い微細な物の認識用途には最適です。
ライトガイドに光ファイバーを使用することで熱のない光を照射することができ、対象物の防熱対策になります。光ファイバーから照射される光は一定の広がり角を持ち志向性の強い照明ですが、拡散板などとの組み合わせにより照明に拡散性を持たせることができます。また、光ファイバーは非常に細いため、スポット、リング、ライン、面状など多様な形状の照明に加工できます。ただしランプのON/OFFの応答速度が遅いため、高速にON/OFFする場合、メカ的にソレノイドシャッターを組み合わせることで対応します。

蛍光灯

波長域:
白色・青・緑・赤・黄(紫外線カット)近紫外(ブラックライト)
寿 命:
2,000~5,000h
特 長:
●高周波帯域の点灯方式によりちらつきがない● ランプの拡散性が高く、広範囲での均一性が高い為、大型の対象物に向く
従来の一般家庭用の交流点灯タイプの蛍光灯ではなく、30kHz~60kHzといった高周波帯域の点灯方式が主流となっております。照度の高い熱陰極
ランプと寿命の長い冷陰極ランプがあります。
ランプの種類が多く、リングタイプ、U字タイプ、直管タイプなどがあります。当社ではリングタイプのランプソケット部のムラを軽減したタイプがあり
ます。ランプの波長帯域(色)は3波長発光白色、青、緑、赤、や近紫外発光(ブラックライト)があります。ランプそのものが拡散性が高く、広い範囲
の照明での均一性が高く、サイズが数センチ以上の比較的大きな対象物に適しています。
照明の形状やサイズはランプの依存が大きいため、小型化や特殊な形状の対応は困難です。また、ランプの径時変化が大きく、寿命の半分ぐらいの
期間で20~30%の照度劣化が起きるため、光量の綿密な管理が必要です。最近では光量モニター付の電圧補正フィードバック機能付電源のライン
ナップによりインライン検査などの連続使用に適合するモデルもラインナップされています。

その他

非常に高い輝度が得られるキセノンランプは、高速移動物体などをトリガーシャッターカメラで撮像するときのフラッシュ照明などに使用します。
光ファイバーライトガイドとの組み合わせが可能です。
光輝度のメタルハライドランプは、ハロゲンランプや蛍光灯で照度が不足する用途に光ファイバーライトガイドなどと組み合わせて使用します。
半導体レーザ(LD)は、光をコリメート(平行)したり、数ミクロンの微小スポットやライン状にできます。光切断法、三角測距法による三次元計測など
に使用されます。

光源比較

項目 ハロゲン光源+光ファイバー LED照明 蛍光灯照明
寿命 100w、最大光量で1,000h 50w、最大光量で2,000h10,000~30,000h 2,000~5,000h
照度経時変化 経時変化少ない 温度変化に弱い 2,000hで25%劣化
絶対照度 高照度(数万Lux~) 暗い(多数個使用で補足) 明るいが集光性なし
照度コントロール 0~100% 10~100% 50~100%
メンテナンス ランプ交換 ユニット交換 ランプ交換
照明のon/off 不可(メカシャッター式で対応) 非常に応答性高い 不可
照明エリア 5mm~100mm 10mm~100mm 50mm~1,500mm、それ以上
照明の大きさ 小型化可能 LEDの数に依存 ランプの大きさに依存
照度分布 均一性の工夫をしている 均一性の工夫をしている 拡散性高い
波長 可視 365~940nm 250nm~可視